訪問看護に転職したいなぁ。
でもどうやって訪問看護の転職先を選べば良いか分からない…。
訪問看護に興味があっても、転職する際、職場の選び方はいまいち分からないよね。
この記事では、訪問看護における転職先選びのポイントや、転職でよくある失敗、志望動機のコツまで解説します。
さらに、訪問看護への転職経験者からのリアルな体験談もご紹介します。
訪問看護に興味はあるけど、まだ一歩が踏み出せていない人はぜひ最後までチェックしてください。
訪問看護事業所の選び方のポイント6つ

訪問看護における転職先選びポイント6つは以下の通りです。
- オンコール体制を確認する
- 教育・研修制度の内容を見る
- 給与・福利厚生を比較する
- 運営母体の規模と方針を調べる
- 見学・体験ができるか確認する
- 面接で聞いておきたい質問を用意する
順番に解説します。
1.オンコール体制を確認する
訪問看護への転職で不安に感じる人が多いのが「オンコール体制」です。
「出動(電話がかかってきて出勤しなくてはならない)がほとんどない」
「看取りや精神科の利用者が多く出動頻度が高い」
など、オンコールの実態は職場によって大きく変わります。
入職後に「思ったより大変…」と感じるケースも多いよ!
職場選びを失敗しないよう、あらかじめ以下のポイントを確認しておきましょう。
- オンコールは月に何回あるか
- 実際に出動する頻度はどのくらいか
- 出動があった場合の手当はいくらか
- 精神科・看取り・独居高齢者など、緊急出動のリスクが高い利用者の割合は多いか
このあたりは面接でストレートに質問してOKです。
オンコールの負担感は、人によって大きく異なるため、自分の生活スタイルや希望と照らし合わせて選びましょう。
オンコールとは
勤務時間外に緊急の連絡(電話)が入る可能性がある待機当番のこと。
特に常勤看護師では、夜間・休日にオンコール対応がある職場が多くなる。
2.教育・研修制度の内容を見る
訪問看護師は一人で対応するので、現場での判断力が求められます。
そのため、教育や研修体制が整っているかは、未経験者にとって特に重要なポイントです。
教育体制や研修制度については次の点をチェックしましょう。
- 入職後、どれくらいの期間OJT(先輩看護師との同行訪問)があるか
- 研修マニュアルの有無や内容
- フィードバック・振り返りの機会があるか
- 勉強会や外部研修への参加支援(費用補助なども含む)があるか
慣れるまでは常に誰かとペアで訪問できる職場もあるよ!
未経験から安心してスタートできる環境かどうかに関わるので、求人票に上記の記載がない場合は面接時に確認しましょう。
3.給与・福利厚生を比較する
訪問看護事業所の給与体系や福利厚生は職場ごとにばらつきがあります。
特に注意したいのが「歩合制やみなし残業の有無」「オンコール手当」などです。
チェックポイントは以下の通りです。
- 月給 or 年俸制か /ボーナスはあるか
- 訪問件数に応じた歩合制(インセンティブ)はあるか
- みなし残業の制度があるか /実際の残業時間と比較して妥当か
- オンコール手当の支給額や頻度はどうか(何回対応でいくらか)
- 交通費、退職金、社会保険完備などの基本的な福利厚生が整っているか
- 有給取得率や産休・育休の取得実績はどうか
また、精神科訪問看護や終末期ケアなどは、負担の重いケースが多い分、給与水準が高めに設定されている事業所もあります。
「給与は良いけど、業務の負担が大きすぎる…」とならないように、業務量とのバランスも含めて総合的に判断することが大切です。
残業時間の有無や実態も併せてチェックしておきましょう。
訪問件数が多い、記録が紙ベース、移動距離が長い、などの要素が重なると、定時では終わらないケースもあります。
インセンティブとは
訪問件数や訪問時間などの実績に応じて支払われる成果報酬型の給与。
例)「1件の訪問につき〇円」や「一定時間を超えた訪問に対して〇%の加算」などで加算される。
みなし残業とは
あらかじめ一定時間分の残業代を基本給に含めて支払う制度。
残業が少なくても多くても固定額が支払われるため、実際の残業時間が多い場合は不足が生じることもある。
例)「みなし残業40時間分含む」などの表示で募集される
4.運営母体の規模と方針を調べる
訪問看護事業所の運営母体は、大手法人から個人経営までさまざまです。
運営母体によって、制度の整備状況・キャリアアップの選択肢・経営が安定しているかが大きく変わります。
- 大手法人:
教育体制や福利厚生が手厚く、未経験者でも安心。
グループ内に複数事業所や病院を持つ場合は、地域間の異動や、病棟・外来、管理職や教育担当などへのキャリアチェンジが可能。 - 中小法人:
人間関係が密でフラット。
柔軟な働き方ができる反面、制度面は未整備な場合も。
また、運営方針として「利用者数を重視する事業所」もあれば、「働きやすさや理念重視の事業所」もあります。
事業所のWebサイト、口コミ、面接時の説明などから「どんな方針で運営されているか」を見極めることが大切です。
転職エージェントを活用すると、内部情報に詳しいため、各ステーションの特徴、口コミの実際などを教えてくれる場合があります。
転職エージェントの活用も検討してみよう!
5.見学・体験ができるか確認する
訪問看護事業所は、面接だけでなく、見学や訪問体験ができる職場を選ぶのが理想です。
実際に見てみて分かることも沢山あるので、訪問体験はしておくのがおすすめです。
- 事業所やスタッフの雰囲気
- 訪問ルートや移動手段
- 実際の訪問の流れや業務内容
- 記録や報告業務のやり方(紙or電子)
訪問看護未経験で不安がある人は、応募前のタイミングで体験ができるか確認してみましょう。
6.面接で聞いておきたい質問を用意する(質問例あり)
面接時、次のような質問は必ず確認しておきたい項目です。
事前にメモしておき、聞き忘れがないようにしておきましょう。

- オンコール体制と出動頻度:
「オンコールの担当回数や実際の出動頻度について、大体どのくらいか教えていただけますか?
→夜間負担の目安が分かる - 1日の訪問件数と移動手段:
「1日の訪問件数の目安と、主にどんな移動手段を使われているか教えていただけますか?」
→業務量や移動負担を把握できる - 入職後の教育体制・フォロー期間:
「研修や同行(先輩と一緒に訪問)はどのくらいの期間が設けられていますか?」
「訪問未経験の方が独り立ちされるまでには、通常どのくらいの期間がかかりますか?」
→ 未経験者でも安心できるか判断できる - 残業の有無・月平均残業時間:
「記録は就業時間内で終わることが多いですか?」
「月の平均残業時間はどのくらいでしょうか?」
→残業実態について分かる

- 記録方法やITツールの有無:
「記録方法は紙と電子カルテのどちらを使用されていますか?」
「訪問後の記録はスマホやタブレットから入力できる仕組みになっていますか?」
「ケアマネさんとの情報共有はFAXが中心ですか?それともメールなども活用されていますか?」
→ 業務効率化されているかや、残業リスクを見極められる - 訪問エリアの範囲:
「訪問エリアの範囲や、遠方地域への訪問頻度について教えていただけますか?」
→遠方訪問件数が多いと帰りが遅くなるため、残業リスクを見極められる
残業について、「残業はありますか?」とストレートに聞きづらい場合、業務の流れを質問する中で自然に確認するのがコツです。
こうした質問に対して具体的に答えてくれる事業所は安心感があり、逆に回答が曖昧な場合は注意が必要です。
訪問看護の転職でよくある失敗4選

訪問看護への転職でよくある失敗例4つは下記の通りです。
- オンコール体制の負担
- 教育制度が整っていない職場
- 給与や条件が期待と違った
- 1人で判断する重圧に耐えられなかった
一つずつ見ていきましょう。
1.オンコール体制の負担
訪問看護でよく聞かれる不満が「オンコールの負担」です。
「月に数回だけなら大丈夫」と思って入職したものの、呼び出しやコールの回数が多い場合は不満やストレスを感じやすくなります。
オンコール対応によって
- 睡眠の質の低下
- 自分一人で判断しなければならない精神的負担
- 出動による身体的負担
このような部分が負担に感じやすい傾向です。
2.教育体制が整っていない職場
訪問看護未経験者にとって、教育体制が整っていない職場は特に注意が必要です。
訪問は基本一人のため、教育や研修が不十分だと不安や孤独感を抱えながら業務に当たらなくてはなりません。
1カ月程度の研修期間を設けている職場が多いですが
- 同行研修が1週間程度
- マニュアルがなく口頭で指示されるだけ
といったケースもあります。
教育制度が整っていない職場は、未経験者にはハードルが高い…。
入職前に教育体制はよく確認しよう!
3.給与や条件が期待と違った
給与や条件が期待と違うのもよくある失敗の一つです。
「高給与」「残業なし」という求人票の情報を信じて入職したのに、実際は
- 残業が多い
- 歩合制(インセンティブ)で収入が安定しない
- オンコール手当はあるが安い
- 交通費の上限が低めの設定
といった部分で不満が出るケースもあります。
条件面は「求人票だけで判断せず、必ず面接で具体的な金額や実績を聞く」のが重要です。
4.1人で判断する重圧に耐えられなかった
訪問時は病棟のようにすぐ先輩や医師に相談できる訳ではなく、状況に応じ自分で判断しなければなりません。
特に急変対応や利用者家族とのやり取りで強いプレッシャーを感じ、短期間で辞めてしまう人もいます。
- 緊急時に管理者や医師にすぐ相談できる体制はあるか?
- ケース会議や定例ミーティングで困りごとを共有できる環境か?
「一人で訪問するけど、一人ではない」と思える環境だと、安心して長く働き続けられます。
訪問看護が自分に合うか合わないか診断してみよう

- 訪問看護に求められる性格やスキルは?
- 訪問看護が自分に向いているか見極めるチェックリスト(YES/NO)
順番に見ていきましょう。
訪問看護に求められる性格やスキルは?
訪問看護では、看護師一人でその場で判断・対応するため、以下のような性格やスキルが特に重要です。
- 主体性:その場で判断し、必要に応じて他職種に連絡・相談できる
- コミュニケーション力:利用者や家族に寄り添い、信頼関係を築ける
- 柔軟性:利用者の生活環境や予期せぬ状況に臨機応変に対応できる
- 観察力:ちょっとした体調変化や生活の異変に気づける
- 体力:移動や訪問件数の多さに対応できる
もちろん、最初から全ての力を完璧に備えている必要はありません。
ただし病棟のようにすぐ相談できる環境がない分「自立心や判断力」が必要なことは念頭に置いておきましょう。
訪問看護が自分に向いているか見極めるチェックリスト(YES/NO)
以下の質問に「YES」が多いほど、訪問看護に向いている可能性が高いです。
自己診断してみましょう。
【性格・スタンス】
- 一人で行動するのは苦にならない
- 状況が変わっても落ち着いて対応できるほうだ
- チームで情報共有しながらも、自分の判断で動くことに抵抗がない
【コミュニケーション】
- 利用者や家族とじっくり話したり関わるのが好きだ
- 利用者や家族の意見を柔軟に受け入れられる
- 利用者や家族の「ありがとう」が大きなやりがいになると思う
【働き方・環境】
- 利用者の生活全体を支える看護に魅力を感じる
- 夜勤よりも日勤中心で働きたい
- 他人の家に上がることに抵抗がない
- アレルギー(ハウスダスト・カビ・動物など)が少なく、訪問先でも支障がない
▼判定目安
YESが7つ以上→ 訪問看護に向いている可能性が高い
YESが4〜6つ→ 工夫次第で適応できる可能性あり
YESが3つ以下→ 事前に研修制度やサポート体制を重視して選ぶのがおすすめ
「NO」が多い場合でも、教育体制が整った事業所であれば少しずつ経験を積んで慣れていくことも可能です。
自分の性格・働き方の好みが、訪問看護と合っているかチェックしてみよう!
訪問看護への転職理由と志望動機のコツ

- よくある転職理由とその背景
- 志望動機に盛り込みたい3つのポイント
- 履歴書・面接で伝える際の注意点とコツ
順番に解説します。
よくある転職理由とその背景
訪問看護へ転職する理由は人によってさまざまですが、大きく次のような傾向があります。
- 夜勤や3交代勤務から解放されたい
体力的な限界や生活リズムの改善を希望し、日勤中心の訪問看護に魅力を感じる人は多い - 一人ひとりの患者さんとじっくり向き合いたい
病棟では時間や業務に追われ、丁寧な関わりが難しいというジレンマから、在宅での個別ケアに興味を持つケース - 在宅医療や地域医療にチャレンジしたい
超高齢社会での医療のあり方を考え、在宅でスキルを活かしたいという価値観の変化 - 家族のライフスタイルや育児との両立を考えて
家庭との両立を重視する中で、働き方に柔軟性のある訪問看護を選ぶ人も
志望動機に盛り込みたい3つのポイント
転職理由をそのまま伝えるだけでは「消極的な動機」に見えてしまう可能性があります。
そのため、以下の点を盛り込み、前向きで説得力のある内容にしましょう。
- なぜ訪問看護を選んだか
- 自分の経験・スキルとの関連性
- 応募先の訪問看護事業所とのマッチング
一つずつ解説します。
1.なぜ訪問看護を選んだか
まず明確にしたいのは「なぜ訪問看護で働きたいか」の理由です。
単に「病棟が合わなかったから」ではなく、訪問看護の魅力や意義に共感している点を伝えると印象が良くなります。
例)
病棟では患者さんと関わる時間が限られており丁寧な関わりができずジレンマを抱えていました。
その経験から、訪問看護では時間をかけて在宅での生活に寄り添った看護ができる点に魅力を感じました。
2.自分の経験・スキルとの関連性
これまでの経験が、訪問看護でどう活かせるかは重要なアピールポイントです。
たとえ訪問看護未経験でも
- 急変対応の経験
- ご家族対応
- 医療処置
などの共通点を見つけてアピールしましょう。
例)
急性期病棟で培ったアセスメント力や緊急対応の経験を活かし、在宅でも安心感のあるケアを提供したいと考えています。
3.応募先の訪問看護事業所とのマッチング
- 応募先のどんな点に魅力を感じたか
- その事業所ならではの特長と自分の価値観との共通点
を伝えると、熱意が伝わりやすいです。
例)
貴ステーションでは、ターミナルケアや精神科訪問看護に力を入れておられる点に惹かれました。
自分の◯◯な経験を活かしながら、在宅でのケアに携わりたいと思いました。
履歴書・面接で伝える際の注意点とコツ
書類・面接のポイントは「深堀り」と「具体性」
「訪問看護に興味がある」という理由だけでは、志望動機としては弱めです。
- なぜ訪問看護に興味を持ったのか
- 自分のどんな経験とつながっているのか
- 自分の経験から、訪問看護師としてどう貢献できるのか
具体的に掘り下げて伝えると、人となりが伝わり、説得力もアップします!
複数の事業所へ応募する際に履歴書の使いまわしはNG
事業所ごとに理念や特徴、求める看護師像は異なります。
同じ志望動機や自己アピールを使い回しても採用率は上がりません。
採用率を高めるためには、応募前に以下をチェックしましょう。
- 公式サイトや求人票で「理念」「運営方針」を確認
- 利用者層やサービスの特徴を把握
- 「この事業所ではどんな看護師が求められているか」を予測
その上で、自分の経験やスキルを「その事業所で求められる看護師像」に沿って結び付けると、説得力のある履歴書になります。
より詳しい履歴書作成のポイントについては、「企業看護師になるには」の記事内「転職成功のポイント」で解説しています。
あわせてご覧ください。
病棟から訪問看護に転職した看護師の体験談

事例1 大学病院の病棟から訪問看護ステーションに転職したAさん(30代前半)
項目 | 内容 |
---|---|
訪問看護師としての経験年数・雇用形態 | 4年目(常勤) |
看護師としての経験年数 | 10年目 |
訪問看護師に転職する前の働き方 | 大学病院の循環器内科・心臓血管外科病棟で2交代夜勤 (早出・遅出・準夜などのシフトもあり) |
どうして訪問看護師になろうと思ったのですか?
大学病院では重症度の高い病棟で、人手不足もあり常に時間に追われていました。
その結果、心に余裕がなくなり「これが本当にやりたかった仕事なのかな?」と感じて。
もっと患者さんに寄り添った看護がしたいと思い、訪問看護師へ転職しました。
訪問看護師の求人はどこで探しましたか?
看護roo!(転職エージェント)です。
担当の方は同年代で親身になって転職先を探してくれました。
各ステーションの理念や特徴、求めている看護師像まで調べて教えてくれたので、効率よく比較できました。
面接ではどのようなことを聞かれましたか?
面接は2社受けて以下の内容でした。
- これまでの経験
- 志望動機
- 看護師を目指したきっかけ
- あなたの看護観を教えてください
- あなたの長所・短所を教えてください
- これまでの経験から訪問看護で何を活かせますか
- (面接した会社を)どんな会社だと思っていますか
- 併願先はありますか
訪問看護の転職先選びで「こうしておけばよかった」と思うことはありますか?
- 給料について交渉すれば良かった
転職1年目の年収は、病棟勤務のときより約50万円も下がり…。
面接時に経験やスキルをアピールし、年収アップを交渉しておけばよかったと後悔しています。 - 職場の人間関係を確認すれば良かった
入職時は看護師8人でしたが、人間関係が悪く、1年で7人が退職。
ステーション閉鎖の危機に直面しました。
事前に見学して、職場の雰囲気を確かめておくべきだったと痛感しています。
訪問看護師として働く中で、やりがいを感じるのはどんな時ですか?
- 患者さんの状態が安定している時
訪問は週に1〜2回のため、次に様子を見られるのは数日後です。
限られた時間でアセスメントや処置を行うため、1回の訪問で全て抜け目なく行わなくてはなりません。
次の訪問で元気な姿を見られると「自分の看護は正しかった」と実感でき、大きなやりがいを感じます。 - 患者さんや家族から感謝される時
「看護師さんの顔を見ると元気が出る」
「(お看取りの際に家族から)自宅で過ごせて安心でした、ありがとうございました」
患者さんやご家族からこうした言葉をいただく瞬間、訪問看護を続けていて良かったと心から思えます。
逆に、大変さや苦労を感じるのはどんな時ですか?
- 1人でアセスメントしなくてはならない時
訪問は基本的に1人です。
日中であればスタッフや医師に電話できますが、すぐに相談できない場面もあります。
特に夜間オンコールでは、自分で患者さんに指示を出す場面もあり、緊急性の判断に戸惑うこともあります。 - 時間が足りない時
訪問時間は事前に決まっているため、その時間内に終わらせることが大前提です。
1人で全て対応するため、医療処置や清潔ケアが多い人は時間との戦いです。 - 真夏の訪問
自転車移動のため、真夏は汗だくになりながら訪問し、シャワー・入浴介助に入ることも…。
体力勝負な部分もあり大変です。
訪問看護のオンコールではどんな内容の連絡が来ますか?電話や出動の頻度も教えて下さい。
【オンコールの内容】
- 自宅での転倒(起き上がれない・ケガをした)
- 体調変化の相談(痛み・苦しさ・不眠など)
- 吸引の依頼
- 便秘時の排出依頼
- 医療機器のトラブル(カテーテル抜去、点滴漏れなど)
- 呼吸停止、エンゼルケア
特に多いのは体調変化の相談です。
基本は電話で対応し、それでも解決できない場合に出動します。
【電話・緊急出勤の頻度】
- 電話の頻度:平均すると2日に1回程度
- 緊急出動の頻度:1週間に1回程度
※ただし、利用者様の状態や数によって大きく変わります。
ターミナルの利用者が多い時は、1日1〜2回電話が鳴ることもあれば、落ち着いていると1週間鳴らないことも。
ごく稀ですが、1回当番中に2件のエンゼルケア(夜21時・朝9時)を経験したこともあります。
これから訪問看護師を目指す人に向けてアドバイスをお願いします。
在宅は病院とは環境が大きく異なるため、今までのキャリアが通用するのかと不安な方もいると思います。
でも、今までの経験が無駄になることはありません。
訪問看護は患者さんや家族に一番身近な立ち位置で向きあえる仕事です。
一歩踏み出す勇気を持ち、思い切って訪問の世界に飛び込んでみてください。
事例2 精神科病棟から精神科クリニック付属の訪問看護師に転職したBさん(20代後半)
項目 | 内容 |
---|---|
訪問看護師としての経験年数・雇用形態 | 2年目(常勤) |
看護師としての経験年数 | 8年目 |
訪問看護師に転職する前の働き方 | 総合病院の精神科病棟で4年勤務(3交代夜勤あり) →転職し美容皮膚科クリニック2年勤務 |
どうして訪問看護師になろうと思ったのですか?
新卒から病棟勤務でしたが、毎日長時間の残業で疲れ切っていて…。
プライベートを優先するため、美容クリニックに転職しました。
でも、美容はやりがいが少なく、自分は精神科看護に向いていたと気づきました。
精神病棟では退院しても再入院する人が多くて。
在宅で継続的に患者さんを支えたいという思いから訪問看護師になりました。
訪問看護師の求人はどこで探しましたか?
ナース人材バンク(転職エージェント)を利用しました。
希望条件だけでなく、今後のキャリアまで一緒に考えてくれたのが印象的でした。
履歴書の添削や面接対策もサポートしてもらえたので、安心して転職活動を進められました。
面接ではどのようなことを聞かれましたか?
以下の内容でした。
- 志望理由
- なぜ精神科訪問看護を選んだのか
- 訪問エリア周辺の土地勘の有無
- 自分の長所・短所
- オンコール対応を希望するか
- 虫(ゴキブリ)や不衛生な環境への訪問もあるが大丈夫か
訪問看護の転職先選びで「こうしておけばよかった」と思うことはありますか?
- ボーナス込みの年収で転職を決めてしまった
求人票にはボーナス込みの年収が記載されていましたが、実際は業績不振で支給なし…。
結果的に転職前より年収が下がってしまいました。 - 残業の詳細について確認すれば良かった
面接では「残業ほぼなし」と説明されていました。
でも実際は人手不足で訪問診療の補助に入るようになり、21時まで残業の日もあって…。
全体の残業傾向や担当業務の変化による残業の可能性も確認すべきでした。 - 体験訪問もしておけば良かった
入職前に体験訪問ができる職場もあるとは知りませんでした。
事前に雰囲気や患者層をチェックしておけば、より安心して転職できたと思います。
訪問看護師として働く中で、やりがいを感じるのはどんな時ですか?
訪問先で「訪問してよかった」と感じるのは、以下のような場面です。
- 発熱で動けなくなっていた利用者さんに気づき、往診を依頼して適切に診察・治療につなげられた時
- 薬の変更を望む利用者さんの声を医師に伝え、納得して服薬を続けてもらえた時
適切に医療へと橋渡しできた時は、訪問看護をやってて良かったなと思います。
逆に、大変さや苦労を感じるのはどんな時ですか?
困難事例や対応に悩む時です。
精神疾患を抱え、がんの既往もある独居の利用者さん。
入院治療を希望せず、自宅で最期を迎えました。
ヘルパー支援やマットレスを変更しても褥瘡が悪化し、最期まで痛々しい様子に「本当にこれで良かったのか」と悩むこともあります。
また、内服薬へのこだわりが強く、訪問日以外にも繰り返し電話で薬の変更を求められるケースなどは、大変さを感じます。
オンコール対応はしていましたか?
面接時に「希望しない」と伝えたため担当していません。
手当はつきませんが、夜は安心して眠れるので、持たなくて良かったと感じています。
これから訪問看護師を目指す人に向けてアドバイスをお願いします。
精神科訪問看護は、病棟のようにナースコールや処置に追われず、一人ひとりとじっくり向き合えるのが魅力です。
担当が変わる際に、一緒に写真撮影を希望されたり、利用者さんが得意のピアノを披露してくれたりと、心温まる場面にも出会えます。
病棟とはまた違うやりがいがあり、看護師として大きく成長できる環境です。
少しでも興味があるなら、ぜひチャレンジしてみてください。
訪問看護への転職でよくある質問

訪問看護への転職でよくある質問は以下の通りです。
- 訪問看護を辞める人が多いと言われるのはなぜ?
- 訪問看護で働くメリットや病棟との違いとは?
順番に見ていきましょう。
訪問看護を辞める人が多いと言われるのはなぜ?
訪問看護ステーションの管理者を対象にした調査によると、退職理由のトップは家庭環境の変化が最多でした。
- 1位:家庭の事情(育児・介護など) 41.1%
- 2位:責任が重い 13.3%
- 3位:給料・賃金が安い 12.9%
その他の離職理由は、利用者宅で一人判断を迫られる場面や、給与・待遇への不満が背景にあります。
つまり「訪問看護=特別に離職率が高い仕事」というわけではなく、ライフステージや職場環境による要因が大きいと言えます。
参考:東京都「訪問看護の人材確保に関する調査 P44」(平成24年)
訪問看護で働くメリットや病棟との違いとは?
▼訪問看護で働くメリット
- 患者一人ひとりとじっくり向き合える:丁寧で密な関わりが可能
- 日勤のみで土日祝休みが多い:プライベートも確保しやすい
- 観察力・連携能力が身につく:
在宅環境に適した観察力や多職種との連携能力を磨ける - 生活の質向上に直結するやりがいがある:
患者の生活環境に合わせた看護を提供できる
▼訪問看護と病棟看護のちがい
項目 | 訪問看護 | 病棟看護 |
---|---|---|
看護の場所 | 利用者の自宅・介護施設など、生活の場に訪問 | 病棟内 |
看護の目的 | 自宅で安心・安全に暮らせるように支える | 病気の治療・回復を優先 |
勤務スタイル | 日勤が基本(夜間オンコール対応あり) 直帰できる場合もある | 夜勤あり(2交代や3交代制) |
関わる職種 | 医師・ケアマネ・ヘルパー・地域の保健師など地域全体と連携 | 医師・リハビリスタッフ・薬剤師など病院内スタッフと連携 |
対象患者層 | 年齢・疾患が幅広く、複数の疾患を持つ人も多い | 診療科ごとに患者層が決まっており、比較的似た症状の人が多い |
【まとめ】訪問看護への転職のポイントを知って自分に合う職場を見つけよう
この記事では、訪問看護における職場の選び方や、転職でよくある失敗について解説しました。
訪問看護事業所選びのポイント6つは以下の通りです。
- オンコール体制を確認する
- 教育・研修制度の内容を見る
- 給与・福利厚生を比較する
- 運営母体の規模と方針を調べる
- 見学・体験ができるか確認する
- 面接で聞いておきたい質問を用意する
訪問看護は、自分のライフスタイルや価値観に合えば長く続けやすい働き方です。
ぜひ今回のチェックポイントを参考にしながら、自分に合う職場を見つけてください。