企業看護師になるには具体的にどうすれば良いの?
企業看護師の働き方って実際どんな感じ?
看護師資格を活かしながら病院以外で働きたい人にとって、企業看護師はとても魅力的だよね。
この記事では、企業看護師の仕事内容やメリット・デメリット、年収や転職の成功ポイントまで詳しく解説します。
さらに現役で企業看護師として働く人の体験談など、リアルな情報も満載です。
日勤のみで働きたい、病院以外で看護師として働きたい人はぜひ最後までチェックしてください。
企業看護師(産業看護師)とは?

企業看護師とは「医療機関ではなく一般企業に雇われて働く看護師」の総称です。
企業で働く看護師にはいくつか種類があり、例えば以下のものが挙げられます。

- 健康管理室で勤務する産業(企業)保健師・産業(企業)看護師:
従業員の健康管理をサポート - 企業に勤める治験コーディネーター(CRC):
治験施設支援機関などに所属。治験を行う医療機関をサポート - 臨床開発モニター(CRA):
製薬会社などに勤務。製薬会社側の立場から治験を監督 - フィールドナース:
医療機器メーカーなどに勤務。自社製品を紹介し導入をサポート - 医療情報担当者(MR):
医療従事者に対し自社の医薬品を販売 - コールセンター勤務の看護師:
保険会社などに勤務。健康相談や問い合わせ対応
治験施設支援機関(SMO)とは
病院やクリニックなどの医療機関と契約して治験業務を支援する民間企業
企業看護師の中でも、健康管理室や医務室で働く「産業看護師・産業保健師」が代表的です。
- 健康診断の実施
- 保健指導
- 職場の衛生管理
などを通して、従業員の健康をサポートします。
「保健師」資格を持っている場合は「産業保健師」と呼ばれることもあり、企業によって呼び方はさまざまです。
共通点
- どちらも従業員の健康管理や支援を行う
- 健康診断、相談対応、職場巡視などを実施
- 実務では明確に分けて扱われないことが多い
違い
- 産業保健師は保健師資格を持ち、より予防的・包括的な健康管理を担う役割がある
- 産業看護師は看護師資格のみでも働ける
※この記事では、読みやすさのため「企業看護師」を「産業保健師(産業看護師・企業保健師)」と同じ意味で使用しています。
企業看護師になるための具体的な5STEP

企業看護師になるための具体的な5STEPは以下の通りです。
- 転職の目的や希望条件を明確にする
- 転職エージェントに登録し求人を探す
- 必要な資格やスキルを確認し準備する
- 応募書類を作成し面接対策をする
- 企業に応募し面接を経て内定をもらう
順番に見ていきましょう。
STEP1 転職の目的や希望条件を明確にする
始めに転職の目的・希望条件をはっきりさせましょう。
自分が企業看護師として何を望むのかを整理し、軸を決めておくと、意思決定する際に判断がブレにくくなります。
例えば、
- 夜勤がない職場で働きたい
- 福利厚生が整った環境で長く働きたい
- 長く働ける環境で安定したキャリアを築きたい
など、譲れない条件を書き出すのも良いでしょう。
時間を取ってじっくりと自分と向き合い、考えてみてくださいね!
STEP2 転職エージェントに登録し求人を探す
企業看護師は非公開求人も多いため、看護師専門の転職エージェントを活用すると効率的に求人を探せます。
非公開求人とは
好条件・採用枠の少ない人気求人で応募が殺到するため、あえて非公開にしている求人。
企業看護師は求人自体が少なく、求人が出てもすぐに埋まってしまうケースがあります。
転職エージェントを活用する際は「企業看護師の求人が出たら連絡が欲しい」旨を伝え、チャンスを逃さないよう注意しましょう。
STEP3 必要な資格やスキルを確認し準備する
企業看護師(保健師)の求人は、保健師資格がないと応募できないものもあるため、応募条件を確認しましょう。
「保健師資格必須」と明記されている求人は、産業(企業)保健師としての採用が前提のため、看護師資格のみでは応募できません。
求人によっては以下のようなスキルが求められます。
- 産業保健の経験
- ビジネスマナー
- パソコンスキル
必要なスキルは事前に習得しておこう!
STEP4 応募書類作成し面接対策をする
転職にあたり、志望動機や自己PRの作り込み、面接対策は重要です。
企業のホームページなどをよく読み込み、自分のスキルがどう活かせるか考えましょう。
自分のスキルの棚卸しと、自己アピールの詳細については「企業看護師になるための転職成功のポイント」の章で解説しています。
STEP5 企業に応募し面接を経て内定をもらう
企業に応募し、面接などを経て内定となります。
面接の頻出質問は以下の通りです。
- なぜ企業で働きたいのか
- どんな経験が活かせるか
- こういう相談(事例)がきた時、どのように対応するか
経験したエピソードを交えて話すと説得力が増すため、具体的に話せるようにしましょう。
企業看護師の仕事内容

企業看護師の主な仕事内容は以下の5つです。
- 健康診断の企画や実施とフォロー
- 従業員の健康相談やメンタルヘルスケア
- 職場環境の改善提案
- 緊急時の応急処置
- 企業全体の健康増進を支える活動
一つずつ見ていきましょう。
1.健康診断の企画や実施とフォロー
企業看護師は、従業員の健康診断を企画・実施し、その後のフォローアップや保健指導まで行います。
- 健診の案内・予約の管理
- 医療機関との連携・調整
- 健診結果の管理・分析
- 再検査や保健指導の案内・面談
従業員の健康を守るための、基盤的な業務です。
2.従業員の健康相談やメンタルヘルスケア
企業看護師は、ストレスや体調に不安を抱える従業員の相談にも応じます。
2015年12月からは、労働者が50人以上の事業所で年1回以上のストレスチェック実施が義務付けられました。
企業看護師は、ストレスチェックや健康診断の結果をもとに相談業務にあたります。
- 個別に面談・フォロー
- (必要時)医療機関の受診を提案
- 休職や復職関連の対応
個別面談を通じて、必要なタイミングで受診につなげるのも重要な仕事!
参考:政策について ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等(厚生労働省)
3.職場環境の改善提案
職場の健康課題が見つかった場合は、企業側に環境改善を提案します。
企業看護師は
- 健康診断結果
- ストレスチェックの分析
- 従業員の相談内容
などををもとに「職場環境から引き起こされる健康リスク」を見つけます。
健康リスクの例
- 長時間の立ち仕事による足腰の負担
- 作業姿勢が原因の慢性的な疲労
過重労働・人間関係によるストレスなど、背景が複雑な場合は、産業医や他部署と連携し改善策を模索していきます。
4.緊急時の応急処置
企業看護師は、職場で急病人やけが人の初期対応もします。
救護室では以下のスキルが必要です。
- 応急処置のスキル
- 救急搬送するか判断するスキル
緊急対応は、一定の看護スキルと実務経験が求められます!
5.企業全体の健康増進を支える活動
企業看護師は、従業員全体を対象とした健康づくりの活動もしています。
健康づくり活動の例
- 生活習慣病予防
- メンタルヘルスに関する社内セミナーの企画・実施
- 社内報を通じた健康情報の発信
健康診断やストレスチェックの結果をもとに、職場で課題となっているテーマを選び、勉強会をすることもあります。
- 熱中症予防
- 働く人の睡眠改善法
など、季節やニーズに即した情報を伝え、企業全体の健康意識の向上に取り組みます。
企業看護師のメリット4選

企業看護師のメリットは主に以下の4つです。
- 夜勤がなく生活リズムを整えやすい
- 精神的・体力的な負担が少ない
- 人間関係のストレスが比較的少ない
- 福利厚生が整っている職場が多い
一つずつ解説します。
1.夜勤がなく生活リズムを整えやすい
企業看護師は夜勤がなく、生活リズムを整えやすいのが大きなメリットです。
企業看護師は土日祝休みの場合が多いため、下記のような人に適しています。
- 家族の予定に合わせたい人
- ママナース
- プライベート重視の人
夜勤による疲労を感じている方には選択肢の一つとして注目されています。
生活リズムが整うと体調管理もしやすいね!
2.精神的・体力的な負担が少ない
企業看護師は、夜勤や急変対応、身体介助などがほとんどなく、病棟勤務に比べて心身の負担が少ない傾向です。
日常業務の多くは健康相談や事務作業などの穏やかな対応が中心で、生活リズムも安定しています。
そのため、下記のような人にも向いています。
- 日勤のみで働きたい人
- 体力的な不安がある人
- 家庭と両立したい人
3.人間関係のストレスが比較的少ない
企業看護師は1〜2名体制で働く場合が多く、看護師同士の人間関係に悩まされにくいのもメリットです。
企業看護師は、緊急対応の頻度も少ないため、比較的穏やかな雰囲気の中で働けます。
自分のペースで仕事を進めたい人にもピッタリです。
4.福利厚生が整っている職場が多い
企業看護師は大企業の求人が中心のため、その分、福利厚生が整っている職場で働けるケースも多いです。
独立行政法人労働者健康安全機構の調査では、従業員1,000人以上の事業場の約77.6%で産業保健師(看護師)が週1日以上常駐しています。
企業看護師は大企業で配置されやすく、その分、
- 各種手当
- 育児支援
- 退職金、社員割引のような独自制度
など、福利厚生が充実した環境で働ける点は大きなメリットです。
参考:令和2年度 事業場における保健師・看護師の活動実態に関する調査報告書 p56(独立行政法人労働者健康安全機構)
企業看護師のデメリット3選

企業看護師のデメリットは主に以下の3つです。
- 看護技術が衰えやすい
- 病院への復帰が難しくなる場合がある
- 求人数が少なく競争率が高い
順番に解説します。
1.看護技術が衰えやすい
企業看護師は、病棟でよく用いられる看護技術は使わないため、徐々に看護技術が衰えてしまう可能性があります。
企業看護師の業務には、
- 清潔ケア
- 点滴
- 注射
などの処置は基本的にありません。
そのため、いずれ病棟に復帰したいと考えている人には、この期間が実務のブランクになり得るため注意が必要です。
2.病院への復帰が難しくなる場合がある
企業看護師として働く期間は、病棟での実務から離れるため、ブランクと見なされる場合があります。
注射や急変対応などのスキルに不安を感じたり、業務の勘を取り戻すのに時間を要すことも考慮しましょう。
病棟復帰の面接で、転職理由やブランクについて問われる可能性も高いよ。
3.求人数が少なく競争率が高い
企業規模にもよりますが、企業看護師は基本1名体制で配置されるため、求人数が少なく競争率が高いのが現状です。
独立行政法人労働者健康安全機構の調査では、保健師(看護師)を雇用している事業場の「約半数が1人のみの配置」でした。
求人が見つかっても倍率が高く、希望する企業に転職できない可能性もあるよ!
働きながらの転職活動は負担も大きいため、転職エージェントの活用がおすすめです。
転職エージェントを活用すると、
- 非公開求人を紹介してもらえる
- 希望条件に合った求人が出た際に連絡をもらえる
- 面接対策や履歴書添削もしてもらえる
上記のように手厚いサポートがあるため、入職のチャンスを掴みやすくなります。
参考:令和2年度 事業場における保健師・看護師の活動実態に関する調査報告書 p49(独立行政法人労働者健康安全機構)
企業看護師に必要な資格や有利な資格は?

看護師資格のみでも企業看護師になれる
企業看護師の求人の多くは、看護師資格だけで応募可能です。
しかし、大企業や業種によっては、下記のような追加条件を設けている場合があります。
- 保健師資格
- 臨床経験年数(3年以上など)
- 産業保健経験
企業看護師に有利な資格4つ
資格や経験は、採用に有利になる場合もあるため、取得できるものがあれば事前に準備しておきましょう。
以下では、企業看護師に有利な資格4つを紹介します。
- 保健師免許
- 衛生管理者
- 産業カウンセラー
- メンタルヘルスマネジメント検定
順番に詳しく見ていきましょう。
保健師免許
保健師免許を持っていると、保健指導や衛生管理計画を任される場面が増え、採用に有利に働く傾向です。
保健師の専門領域
- 予防的視点
- 集団へのアプローチ
企業内では、病気にさせない仕組みづくりを任せられる場面が多く「組織と従業員の橋渡し役」として重宝されます。
保健師資格の取得方法については「看護師免許のみでも保健室の先生になれるかについて解説」した記事で詳しく説明しています。
衛生管理者
衛生管理者は資格を持っていると、企業からの評価が高くなりやすい傾向です。
常時50人以上の事業所では、労働安全衛生法12条及び関連規則で、衛生管理者の選任が義務付けられているためです。
看護師免許を持っていれば、第一種・第二種衛生管理者のいずれかを受験できます。
比較的取得しやすい資格とされているよ!
参考:よくある質問 衛生管理者について教えて下さい(厚生労働省公式HPより)
産業カウンセラー
産業カウンセラーは、メンタルヘルスケアやカウンセリング場面で強みになる資格で、以下について体系的に学べます。
- メンタル支援に関する知識
- 傾聴スキル
受験資格は、一定の実務経験(学歴により異なる)または協会が提供する養成講座の修了が必要です。
養成講座は通学または通信制+スクーリングの形式で学べて、試験合格で資格取得できます。
養成講座は全国で開講されているよ。
メンタルヘルスマネジメント検定
メンタルヘルス・マネジメント検定は、以下の業務に役立つため、持っておくと採用に有利です。
- メンタルヘルス対策
- ストレスチェック対応
- 職場環境の改善提案
Ⅱ種(管理職向け)やⅠ種(人事・労務管理者向け)を取得すると、組織的なメンタルケアに関するスキルの証明になります。
ストレスチェック結果の活用や、従業員へのアドバイスに説得力が増し、採用面でもプラスに働く場合があります。
テキストや過去問も充実している!
働きながらでも学びやすい資格だよ。
求められる臨床経験やスキル
企業看護師の求人では、臨床経験3年以上を目安にしているケースが多く見られます。
評価されやすい代表的なスキル3つは以下の通りです。
- 急変対応時の判断力
- 患者への生活指導
- 保健指導経験
外来や健診センターの経験があると、企業での健康相談や健診対応にスムーズに応用できるため、選考で有利になる場合があります。
書類や面接では今までの経験が企業内でどう活かせるかを具体的にアピールしよう!
これまでの経験の棚卸しの方法は「企業看護師になるための転職成功のポイント」の章で解説しているのでご覧ください。
企業看護師の年収は?

看護師全体の平均年収との比較
企業看護師の年収は、看護師全体の平均とほぼ同水準です。
企業看護師の年収に特化した公的なデータはありませんが、求人情報などから見ると450〜500万円前後が相場とされています。
一方、「賃金構造基本統計調査(令和5年)」によると、看護師全体の平均年収は約508万円で、大きな差はありません。
ただし、勤務先の企業規模や地域、雇用形態によって収入に差が出ることがあります。
大手企業や都市部…年収はやや高め
非常勤や地方勤務…年収はやや低め
の傾向です!
参考:e-Stat 厚生労働省「令和5年 賃金構造基本統計調査」(職種コード:看護師を参照)
大手企業看護師の年収傾向
企業看護師の中でも、大手企業に勤務する場合は、比較的年収が高くなる傾向です。
「賃金構造基本統計調査(令和6年)」では、従業員1,000人以上の事業所に勤める看護師の平均年収は約521万円でした。
これは看護師全体の平均年収(約508万円)をやや上回っています。
大企業ほど待遇が安定しているってことだね!
参考:e-Stat 厚生労働省「令和6年 賃金構造基本統計調査」(看護師/事業所規模別の年収データ)
企業看護師に向いている人は?

企業看護師に向いている人の特徴は以下の3つです。
- 自分のペースで働きたい人
- コミュニケーションをとるのが好きな人
- 計画性がある人
一つずつ見ていきましょう。
1.自分のペースで働きたい
企業看護師は、1人体制の職場が多いため、自分のペースで働きたい人に向いています。
企業看護師は急患対応が少なく、突発的な業務も限られているため、スケジュールを立てて計画的に業務を進めやすい環境です。
- 自分の裁量で業務を組み立てたい人
- スケジュール管理が得意な人
- 落ち着いた環境で仕事をしたい人
上記のような人には魅力的な働き方です。
2.コミュニケーションをとるのが好きな人
企業看護師は、社員の健康相談や教育など、人と関わる機会が多いため、コミュニケーションを取るのが好きな人にも向いています。
健康課題への対応・職場環境の改善を進めるにあたり、産業医や人事担当とも連携が必要です。
相手に応じた柔軟な対応ができるスキルも求められます。
3.計画性がある人
企業看護師は計画性がある人にも適しています。
企業看護師の仕事は、下記のように、計画的に進める業務が多いです。
- 健康診断
- 面談のスケジュール管理
- 報告書作成
自分で段取りを立てたり、
タスクを整理し優先順位をつけて動ける人は
スキルを発揮できる!
企業看護師になるための転職成功のポイント

実際に働いている方の体験談をもとに、企業看護師になるための転職成功のポイントを4つ紹介します。
- 企業看護師に求められるスキルを理解し自己分析する
- 企業や職種をリサーチし企業のニーズを把握する
- 自分の経験を企業が求める能力に合わせて伝える
- エージェントやハローワークなど複数活用する
順番に解説します。
企業看護師に求められるスキルを理解し自己分析する
企業看護師に求められるスキルについて理解し、自分の強みを整理してみましょう。
企業看護師に求められるスキルと照らし合わせて自己分析することで、自分の強み・課題が分かります。
自分の強みや課題がはっきりすると、面接で自信を持って返答でき、入職後のギャップも減らせます。
ぜひ実践してみてね!
企業看護師に求められるスキル4つ
現役企業看護師へのアンケートから見えてきた「企業看護師に必要なスキル」は以下の4つです。
- 1人で判断し、提案する力
- 健康施策を自ら考えて動かす力
- 相手の話を聴く力
- 会社の方針と従業員の健康支援を両立させる力
自分の強みや弱みを整理し自己分析する
企業看護師に求められるスキルに対して、自分自身がどこまで当てはまるのかをチェックし、強みや課題を分析してみましょう。
スキル | 評価 | 強み | 課題と対策 |
---|---|---|---|
主体性 | 例) 得意/苦手 | 例) 適切にヘルプを出せる | 例) ・課題:一人で判断する ・対策:社内外に相談相手を作る |
提案力 | |||
傾聴力 | |||
調整力 |
例えば、
傾聴は得意だけど、一人で判断する場面には不安がある…
と感じるなら、それがあなたの課題です。
ですが、それを「どう乗り越えるか」を事前に考えておけば問題ありません。
- 社内外に相談相手を作る
- 判断に必要な知識を学んでおく
のように、事前に課題を乗り越えるための対策ができます。
自己分析は「自分に向いているかどうか」ではなく「自分のどこに強みがあり、どこに伸びしろがあるか」を知る方が重要です。
自己分析で分かった強みを、
自分なりの言葉で
志望動機・自己PRに落とし込もう!
企業や業種をリサーチしニーズを把握する
次に企業や業種をリサーチしニーズを掴みましょう。
業種や職場体制によって求められるスキルや役割が異なるため、実際の仕事内容も変わってきます。
例えば、下記のように業種によっても重視されるものが違います。
業種による違い
- 製造業…安全管理が重視される
- IT企業…メンタルヘルスや長時間労働への対応が求められる
「この企業はどんな課題を抱え、どんな人材求めているか」
を自分なりに仮説を立てることが重要です。
募集要項だけでなく、以下のものも活用し、多方面から情報を集めましょう。
- 企業のホームページ
- 健康経営の取り組み
- 口コミサイト(転職会議など)
- 転職エージェントの情報など
このステップを踏むと、企業に刺さるアピールができるよ!
自分の経験を企業が求めるスキルに合わせて伝える
企業がどんな人材を求めているか仮説を立てたら、次は自分の経験を整理して「棚卸し」しましょう。
この作業の目的は、自分の経験から企業が求めているスキルに合うエピソードを見つけて、上手に伝えられるようにすることです。
- これまでの職歴や担当業務をリストアップする
- それぞれの業務で得た成果や学びを書き出す
- その成果を出すために工夫した・考えたこと(プロセス)を振り返る
- 企業が求めるスキルに当てはめて、応募書類用に文章化する
企業が求めるスキルに当てはめた文章化の例

例)病棟勤務で糖尿病患者のインスリン自己注射を指導していた場合
- 入院中の糖尿病患者に対して、退院後を見据え、インスリン自己注射指導を実施
- 対象者の理解度に合わせて計画を立て、手技の習得レベルに応じて指導方法を調整
- 不安の強い方にも寄り添いながら、最終的には自立して自己注射ができるよう支援した
単に、「指導した」と伝えてもアピールが足りません。
しかし、上記のようにすると「アセスメント力・計画性・個別対応力」をアピールでき企業看護師にも求められるスキルが伝わります。
経験(成果)そのものよりも、プロセスに焦点を当てるのがポイントです。
企業が求めるスキルに合わせて表現を工夫すると
あなたの価値が伝わりやすくなる!
転職エージェントやハローワークなど複数活用する
企業看護師を目指すなら、転職エージェントやハローワークなどを併用するのが効果的です。
企業看護師は求人数が少なく、倍率も高めです。
病棟勤務のように常に募集があるわけではなく、気づいた時にはもう埋まっているケースも多々あります。
転職エージェントなら、事前に希望すれば、条件に合う求人が出たらすぐ教えてくれるため活用しましょう。
早めに「企業看護師を希望」と伝えておこう!
一方、ハローワークは自主的に求人を探すスタイルですが、地域限定の求人やエージェントには出回らない案件に出会える場合も。
転職エージェントとハローワーク、それぞれの強みを活かすと、理想の職場に出会いやすくなります。
転職サイトとハローワークのちがいについて解説した記事も合わせてご覧ください。
企業看護師に転職した人の体験談

事例1 Aさん 予防の大切さに気づき病院勤務から企業看護師の道へ(40代)
項目 | 内容 |
---|---|
企業看護師としての経験年数・雇用形態 | 10年以上(非常勤) |
看護師としての経験年数 | 8年以上 |
企業看護師に転職する前の働き方 | 総合病院の内科病棟 (新卒〜3年:常勤・夜勤あり) →市町村の保健師 (1年未満) →総合病院の外来で心臓リハビリ・整形外科・皮膚科 (5年以上:パート) |
企業看護師の1日のスケジュール(一例)

どうして企業看護師になろうと思ったのですか?
腎臓・内分泌内科病棟で、多くの生活習慣病患者の療養指導を通し、予防や健康維持の重要性を強く感じました。
その経験から「もっと早い段階で健康を支える仕事がしたい」と思い、企業看護師に興味を持ちました。
市町村の保健師も選択肢の一つでしたが、対象を絞って深く関わる方が自分には合っていると感じて。
結婚を機に、日勤のみで働きたかったのも、企業看護師を選ぶ決め手になりました。
求人はどこで探しましたか?
当時はまだ転職サービスが少なかったので「eナースセンター(日本看護協会が運営)」を利用しました。
求人を探すのは大変でしたが、公的サービスなので安心感がありましたね。
転職活動で苦労したことはありますか?
地方では企業看護師の募集が少なく、求人探しに苦労しました。
求人票に書かれている業務内容を見ても、病院での経験が本当に活かせるのか、自信が持てず不安がありました。
面接ではどんなことを聞かれましたか?
- 企業看護師を志望した理由
- 病院勤務時代に担当していた診療科や業務内容
- 産業保健の経験がない中で、どのように対応していくか
生活習慣病患者への療養指導経験を活かし、健康診断後のフォローや指導業務には問題なく対応できる点をアピールしました。
やりがいを感じるのはどんな時ですか?
サポートが必要な方を適切な医療機関につなげて、重大な疾病を未然に防げた時です。
健康診断で「要受診」になっても、何年も通院と中断を繰り返している場合もあります。
そうした人に、粘り強く定期的に声をかけ、受診につながったり、通院を継続できるようになった時は嬉しいです。
その後も、元気に働いている姿を見ると安心しますね。
メンタルの不調は受診の壁がある人も多いですが、面談を通じて支援した結果、受診して回復されたケースもあって。
「この仕事をしていて良かった」と心から思いました。
もちろん、声をかけても受診につながらず、残念な結果になることもあるので…。
だからこそ、早期に気づき、必要な支援へつなぐことが、企業看護師の大切な役割だと実感しています。
逆に、大変さを感じるのはどんな時ですか?
一人職場なので、全ての判断・対応を一人で行う負担があります。
メンタルヘルスの支援は一件一件内容が異なり、慎重な判断が求められるため、責任の重さを感じます。
企業で働く上で
- 健康支援の専門職としての立場
- 企業組織の一員としての立場
この2つのバランスに難しさを感じることもあって。
従業員の健康を第一に考えつつも、企業側の方針や制度も踏まえた対応が求められます。
時には、従業員と企業の間で意見が食い違う場合もあり、その調整役になることも。
なので「企業も従業員への安全配慮義務がある」という視点で、公平・中立な立場から必要なことを丁寧に伝えるようにしています。
これから企業看護師を目指す方へ、アドバイスをお願いします。
企業看護師は予防や支援が中心のため、医療知識だけでなく
- 話を聴く力
- 信頼関係を築く力
- 伝える力
がとても重要だと感じます。
一人で判断する場面もあるため、情報を集めて考え、必要に応じて周囲に相談できる姿勢も求められます。
「自分にできるかな…」と不安になるかもしれませんが、始めは私もそうでした。
でも実務を通じて自信はついていきますし、健診後の面談や健康相談では、これまでの経験をしっかり活かせます。
どうかご自身の経験を信じて、一歩踏み出してみてください。
心から応援しています。
事例2 Bさん 行政保健師から社員に寄り添う企業看護師の道へ(30代前半)
項目 | 内容 |
---|---|
企業看護師としての経験年数 | 1年目・嘱託社員 |
看護師としての経験年数 | なし |
企業看護師に転職する前の働き方 | 行政保健師(常勤) |
企業看護師の1日のスケジュール(一例)

どうして企業看護師になろうと思ったのですか?
もっと予防に力を入れた保健師活動がしたい、と思ったのがきっかけです。
行政では個人対応が中心で、自分で企画を立て提案したりできない場面も多くもどかしさがありました。
そんな中、健康経営の考え方や企業看護師に興味を惹かれました。
社員の健康を支えるだけでなく、自分で仕組みや活動を作っていける所も魅力でした。
求人はどこで探しましたか?
エージェントの「プライマリーアシスト」を利用しました。
年度途中の転職で求人数は少なめでしたが、産業保健の経験を積むことを優先し、職場を決めました。
転職活動で大変だったことは?
一番大変だったのは、こっそり転職活動しなければならなかったことです。
面接のために急きょ時間休を取るなど、周囲に気づかれないように動くのが精神的に負担で…。
また、やや妥協して選んだ部分もあったので、「まずは経験を積むステップ」と割り切って転職に踏み切りました。
面接ではどんなことを聞かれましたか?
- なぜ産業保健師になりたいのか
- なぜ公務員を辞めるのか
- こういう相談(事例)がきた時、どのように対応するか
といった質問が中心でした。
やりがいを感じるのはどんな時ですか?
- 自分の裁量で企画や提案ができる時
- 社員と近い距離で、実態を丁寧に聞きながら関われる時
- 経営層と一緒に健康経営の企画を立ち上げ、0→1に携われている時
- 社員さんから「あなたに話してよかった」と言われた時
こんな時はやりがいを感じます。
逆に、大変さを感じるのはどんな部分ですか?
- 会社の方針と、保健師としての思いとの折り合いが難しいこと
- 健康への関心をどう経営層に持ってもらうか、その伝え方や根回しの工夫が必要なこと
- 一人職場で相談相手が限られていること
- 健康に無関心な層にどうアプローチするかの難しさ
組織の中で活動する以上、「会社は何を求めているのか」を意識して動く必要があると日々感じています。
これから企業看護師を目指す方へアドバイスをお願いします
企業看護師は、予防の大切さを直接伝えられるやりがいある仕事です。
- コミュニケーション力
- 企画力
- 提案力
- アセスメント力
など、幅広いスキルが磨かれます。
ただし、企業によって、組織体制やできる保健活動の幅が本当にさまざまなので、転職活動時には丁寧に確認した方が良いと思います。
私自身、今は一人職場で自分のペースで仕事ができ、デスクワーク中心なので体力的にも無理がありません。
「働きやすさ」「やりがい」の両方を感じられる仕事です。
ぜひ挑戦してみてください。
企業看護師についてよくある質問

未経験でも企業看護師になれる?
企業看護師は、未経験からでも目指せます。
しかし、即戦力が求められる傾向があるため、臨床経験や関連研修受講の実績、資格がある方が有利です。
未経験OKの求人もまれに存在するため、積極的に情報収集しましょう。
チャンスを逃さないよう動くのが大切!
派遣や契約社員でも企業看護師として働ける?
企業看護師は、派遣や契約社員として働くことも可能です。
特に未経験の場合は、まず派遣や契約社員として現場経験を積み、その後に正社員を目指すルートを選ぶ方も多くいます。
ただし、派遣や契約社員は正社員に比べて雇用が不安定だったり、給与・福利厚生の面で差が出る場合があります。
ライフスタイルやキャリアプランのことも考えて選ぼう!
【まとめ】企業看護師について知ろう
この記事では、企業看護師になるための具体的な5STEP、メリット・デメリット、転職成功のポイントなどを解説しました。
企業看護師になるための5STEPは以下の通りです。
- 転職の目的や希望条件を明確にする
- 転職エージェントに登録し求人を探す
- 必要な資格やスキルを確認し準備する
- 応募書類を作成し面接対策をする
- 企業に応募し面接を経て内定をもらう
「企業看護師として働きたい」と思った方は、まずは自分自身と向き合うところから始めてみて下さい。
そして、自分に合った職場と出会えるよう、じっくりと情報収集と準備を進めてみましょう。
あなたのこれまでの経験や思いが、きっと企業での健康支援に活かされるはずです。